2012.5.20 レガシィ 2.0 GT DIT 誕生!E

件の支店からクルマで15分ほど走って、本社へ。

 ちょうど スターリングシルバー・メタリック の BRZ が試乗から戻って来たところだった。

 う〜〜む。確かに何度見ても単純に 「カッコいい」。

 6MT の方は、衝動買いが趣味(?)という知り合いのクルマを、半日ばかり 「味見」 させてもらっている。

BRZ と ビストロ スポーツ
BRZ と ビストロ スポーツ

6MT で走ってみた第一印象は ----- 近いものを探せば、BL型 レガシィB4 2.0R だろうか。

 2003年、吸気側に AVCS が新装備となった EJ20 の NA DOHC エンジン は、それまでの BE/BH型のそれが、 バサバサ といった感じのノートを伴いながら、忠実にトルクを稼ぎ出すものの、6,000rpm 以上は伸び渋る ----- といっても、直列4気筒 のライバルに比べれば、はるかに 「回し甲斐」 もあって楽しいのだけれど ----- といった感じから、スーッ とレブリミットまで回り切る、スマートさを手に入れた。

ただ、「あの頃」 より、絶対的な ノイズ、バイブレーション、ハーシュネス という NVH は、当然、格段にレベルが上がっていて、なにより、駆動方式が FR ということもあり、エンジン、トランスミッション、その他 補機類 の フリクション も 全然少ない。

 だから、乗っていて 「あ〜、今パワステポンプが頑張ってんのね〜分かる分かる〜。」 みたいな 「雑味」 が決定的に 「少ない」 というより、 「ない」。

BRZ FA20 エンジン

じゃあ プレイステーション で 「グランツーリスモ3」 でもやるような 「バーチャル」な感覚か? といえば、加速、減速、横のG があって、サスペンションのストロークやダンピング感も、無論ある。

 そして、一番の 「違い」 は、クルマ の 重心軸 を 中心に起こる 回転モーメント、 「ヨー」 を体で感じることができること。

 こればかりは、いくら ショックジェネレーター が発達しても、ゲームでは到底再現することはできない。

 アーケード版 「セガラリー」、「セガラリー2」 九州チャンピオン の私が言うんだから間違いない。

 ゲーム が、あくまでも「バーチャル で ストイック な世界」 なのに対して、BRZ は「リアル に ストイック な世界」に浸れることに価値があるのだ。

  とはいえ、7,500rpm から 8,000rpm という、高回転域 で、特有のビート感を伴いながら、一気に圧倒的なパワーを炸裂させてクライマックスを迎える、あの、あまりにも 「甘美な」 EJ20ターボ の「ファイティング・ボクサー」 の 「流儀」 とはちょっと 「趣き」 が違っていて、トルクカーブの曲線は緩やかだ。でも「きっと」 7,000rpm まではストレスなく回り切ってくれるだろうと思えた。

 なぜ 「きっと」 なのかといえば、例の オーナー の 「馴らし」 に付き合ったという関係上、オドメーター が 1000km を超えて、ようやく 「5,000rpm まで回してもいい」 という 「お許し」 を頂いたものの、回るものならエンジンだろうが皿だろうが、なんでも 「回したがる」狂信的スバリストの隣で、「5,000rpm 以上は絶対回すなよっ!!!」 と、目を三角にしている (回したら、間違いなく 「グー」 が飛んでくる) オーナー の厳重な 「監視下」 にあったという 「事情」 があったためで (当然である)、でもね、ボク はやっぱり 「回したい」のよ!!

BRZ コックピット

BRZ の購入を真剣に考えている人だけでなく、「これまでの スバル と比べてどうなの?」 とぼんやり考えている人も、BRZ には、絶対乗って頂きたいと思う。

 それは、BRZ が、これまでの スバル が持ち得なかった 「スポーツカー」 という 「文法」 を、新たに スバル の血の中に持ち込み、それをきちんと独自の世界として昇華させることに成功しているからだ。

言うまでもないことだが、低い位置にあるシートに腰を下ろすと、ステアリングの向こう側に展開される風景が上の写真だ。

 深いメーターバイザーのおかげで、インストルメントパネルは 「ほの暗く」、その暗闇の中央に 大きなタコメーター、そして その左に指針位置が違う スピードメーターが ポッカリと 浮かんでいる。

 これは、走り始めると、だんだん、トヨタの 多田チーフエンジニア(以下 CE)、富士重工業 の 増田CE が意図したであろう 「BRZ の走りの世界」 へ ハマっていく第一の 「罠」 である。

 まず大通りに出て、深めにアクセルを開けると、AT でも 6,000rpm までは軽く回る。あわてて同乗の セールス氏 が 「二つ目の信号を右に入ってください!」 と叫ぶ。 結構速い。それに何か、昔からのスバリストの琴線を震わす 「雰囲気」 がある。

 何だろう?

 前方の信号が赤に変わりそうだ。ここで速めのペースから強い制動を掛けてみる。剛性感はたっぷりで、踏力は少なくて確実に止まってくれる ブレーキ だが、何より 踏力 に応じて微妙なコントロールが可能であることが嬉しい。そして、ピッチング、ノーズダイブもごく少ない。クルマの 「軽さ」 を実感する。また、50:50 に限りなく近い 前後重量配分 も、従来より後方へ、そして低い位置にマウントされた 水平対向エンジン の恩恵もあるだろう。

 軽く踏んでも、いきなり ドバッ と効くような、最近のクルマには、よくありがちな オーバーサーボ な ブレーキ ではない。

 信号を曲がると 駅前通り である。日常的なペースで走るシチュエーションでも、前方と左右の見切りは開けているので、歩行者や自転車の確認にも不安はない。乗り心地いいねぇ〜。

 同じコースの 2周目 に入る前に、ちょっと広い直線がある、前方は空いているので、再びアクセルを深めに開ける。高まるエキゾーストノート に混じって聞こえる シューッ という 「音」。

 それは、来る日も来る日も、スバル1300Gスポーツセダン で ダウンヒル に興じ、楽しくて楽しくて仕方がなかった記憶を突然呼び覚ました。

 そうか!BRZ には 「サウンドクリエーター」 なる、吸気音を演出する デバイス が備え付けられていたんだ!

 同じコース なら 2周目 はもっと楽しい。

 なにしろ、BRZ の車両重量は、最上級グレード の S であっても 1250kg でしかない。それはどういう 「重さ」 かというと、VDC、ABS、エアバッグ、その他の安全装備が全部付いて、そんな安全装備などなんにも付いてない BC5 レガシィRSタイプR より、まだ 40kg も軽量なのだ。

 その BC5 より軽い車両重量は、前と後ろに均等に割り振られている ----- それだけいえば、きっとここまでお読み頂いた方には、そのハンドリングをもうお察し頂けるだろう。

 で、レガシィ 2.0 GT DIT はどこ? なにぃ!一足違いで別の支店にぃ?

 私は、多忙の折にも関わらず私の試乗に付き合って頂いた セールス氏 に、心からの感謝と頭を何度も下げ、再び ビストロ スポーツ に乗り込んだ。


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